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雑文。

雑記と主にテニプリ&気の向くままのジャンルのSS(ベーコンレタス)を置いています。

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2024/11/23(Sat)03:58

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Call me whenever you feel lonely.

2008/09/26(Fri)21:48

不知新
 
携帯のランプが光ったのは、深夜零時を過ぎた頃だった。
ディスプレイを見てみると、メールではなく着信であり、俺は慌てて電話に出る。
「もしもし」
声が裏返りそうになりながらも、はっきりと告げた言葉の次に、
相手から紡がれた言葉はなかった。
無言の中に機械のノイズが混じる。
ノイズが聞こえると言葉を発することに躊躇してしまうのが人間の性だろう、
ずるずると無言が続いてしまう。
悪循環。
と、向こうで空気の動く音がした。
その音は息を吸う音だった。
しかしそれでも言葉が紡がれる気配がしないため、
相手が息を吸い込んだのを無理矢理音なのだと理解し、
相手は喋ったのだと自分を少しだけ騙した。
音がないと喋りにくいのなら、無理にでも音を作るまでのこと。
「浩一…どうした?」
瞬間、向こうで空気が止まるのが分かった。
きっと息を詰めたのだろう。
「あ」
意識せずに洩らしたのだろう言葉には、安堵と不安が隠(こも)っていて、
次にはあわあわと自分が洩らしたその単語をかき消すように言葉を紡いできた。
「なんでオレだって…」
「ディスプレイに表示されるだろう」
当たり前のことを不思議そうに言われて、思わず至極真面目に返してしまった。
するとまたノイズが聞こえはじめてしまう予兆があったので、急いでこちらから言葉を紡ぐ。
「で、どうしたんだ?」
「あー…んー…」
歯切れの悪い言葉に眉間に皺が寄るのが分かる。
何かあったのだろうか。
「いや、んー…あー」
尚も続く感動詞の羅列に、ふと、昔のことを思い出した。
小さな頃、こうやって電話を掛けてきては、
ずっと何も言えずにあー、うー、と必死に言葉を紡いでいたことを。
あの頃は、何故電話を掛けてきていたんだったか。
「あの、知弥」
「ん?」
「あ、いや、何でも…」
言い淀む浩一に、先ほどの思い出を追って、ある言葉が頭の中に浮かんできた。
小さな浩一が、小さな声で、言った言葉。
変わらない、と言ったら怒るだろうか。
「Call me whenever you feel lonely.」
「え?」
目を丸くした姿が、携帯越しにはっきりと見えた。
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あとがき

No.58|比嘉。Comment(0)Trackback()

とぅしびー。

2008/07/06(Sun)21:23

不知新(新垣誕生日文)
 
海を見ているのは楽しかった。
別に憔悴しているわけではなく、ただ、波のかえしていくのが面白かった。
砂浜ではなく岩場を選んだのは、こちらのほうが好きだったからだ。
赤というよりオレンジの強い太陽の光が眼を焼く。
海の青と太陽のオレンジの境界線はどこなのだろうか、と思って、
一生懸命に波のかえすのを見ていた。
今日は特別な日だ…俺の誕生日。
でもそんなに特別じゃなくて良かった。嬉しかったけれども、
周りがあまりに騒ぎ立てるものだから、ついいつもの日常が欲しくて、こうやって海を見ている。
海はいつも俺たちのそばにあったから。
だんだんとオレンジが負けてきて、結局、空と海は闇を受け入れていた。
俺の足もとにはくしゃくしゃに畳まれた洋服が置いてあって、その服は見慣れたモノだ。
その服は自分の幼馴染のモノで、俺よりすこし大きめの服だ。
陽は落ちたから、戻ってくるのはもうすこしだろうか、そう考えながら、波の音に耳を集中させる。
ざー…ざー……ざー…
ざばっ
不意に聞こえた、波とは違う音に肩が跳ね、無意識に閉じていた瞼が一気に上昇する。
「浩一?」
手に持った防水の懐中電灯の光の俺に当てたのは幼馴染の知弥で、
直接、眼に入る光に、俺は目を細めた。
「知弥、みーちらさん」
「あ、ああ、わっさいびーん」
海から上がって懐中電灯の光を消した知弥は、薄っすらとした月と海沿いの家からの明りを頼りに、
身体に張り付いた海水を拭き、服を着始めた。
ふと、違和感を覚える。
何だろうか。
…ああ、知弥の動きが、どことなくおかしいんだ。
「知弥」
「ぬー?」
「ぬー、隠しはるぬ?」
ぴっ、っと止まった知弥にまた同じ問いを問いかけると、
あー、と迷った声を出しながら、知弥は俯いた。
何かいけないことでも聞いたのだろうか。
声になっているのかなっていないのかよく分からない濁音を出し、
がしがしと頭を掻きながら、知弥は、観念した、という風にずいっ、と左手を突き出してきた。
「これ」
「…貝殻?」
「誕生日…欲しい物ねーらんって言ってたから…浩一、ちゅらさんな物しちゅんだばぁ?」
「うん」
「やくとぅ、これやたんら、まぁ、良いかやぁ、と思って」
「ふーん」
知弥から渡してもらった貝殻は真っ白く、普通の貝と大きさが変わるわけでもなかったが、
形が綺麗で、アクセサリーに使うといいんじゃないかと思った。
きっと知弥のことだから、形がいいものを探しに探したのだと思う。
それにしても真っ白な色だ。綺麗。
「知弥、にふぇーでーびる」
お礼を言うと、知弥は、はぁー、と息を吐いて、帰るぞ、と歩き出した。
その帰る途中で知弥に、
「次や欲しい物決めておけよ。毎回これじゃあ、わんぬ気がすまねーらん」
と言われた。
俺は毎回これでもいいかと思うのだけれど、知弥のために、来年は決めておこう。
「うん」
今日は、特別な日で、ちょっとは、良かったかもしれない。


あとがき

No.53|比嘉。Comment(0)Trackback()

聴。

2008/04/02(Wed)00:35

不知新
 
「ご、ごめん、知弥…」
「いや、いいしが…あ、くぬぅやろ…ッ!」
「それにしてもどうしたんだ、ともやのヤツ・・・いつもは大人しいむんぬ」
きっとその小さな体内では野生に勝るとも劣らない筋肉が稼動しているのだろう。
周りに響くほどの地面を蹴る音が聞こえる。
地面を這いつくばるかのように移動しているのに、その速さは尋常ではない。
いや、実際には這ってはいない。不知火たちの視線が上からなのでそう見えるのだ。
ピンッと耳を立てて次の追っ手に備える姿は、とても小動物とは思えないほど、勇ましかった。
新垣の持ったリードから逃れた、
数メートル先で不知火たちに背を向けて微動だにしない新垣家の黒ウサギ・ともやは、
不知火たちが近づく度に逃げ、また遠くで耳を立て追っ手に備える。
「くぬぅ…!」
不知火が姿勢を低くして瞬発力を利用しともやを捕まえようとする。
しかしまた逃げられ、同じように耳を立てられる。
姿勢を低くしていたことによってたたらを踏んだ不知火に、ふとどこかから視線が飛んできた。
不意に辺りを見回し始めた不知火に疑問を感じた新垣が声をかける。
「知弥?」
「いや、なんでもない」
辺りはひらけているにもかかわらず、遠くを見ても人影は一つも見えなかった。
気のせいか、とまたともやに向き直った不知火は、
じっとともやが自分のほうを見ていたことに気がついた。
…くぬちゅか…?
ウサギは元々あまりキョロキョロと視線を泳がせないものなので
じっと見ていても不思議ではないのだが、
それにしても何かしらの感情を読み取れるような、そんな類の視線のように感じた。
その感情のような何かを感じようと黒く大きな瞳を見ていると、その瞳の位置が一気に上昇する。
「よっし、やっと捕まえた!」
土色の地面に這っていた黒い塊が、今度は新垣の腕の中にあった。
不知火と視線を交わしている間に近くに寄って行っていた新垣によって抱き上げられたのだ。
すこし怒ったような口調でともやに言い聞かせる新垣だが、その表情は綻んでいて、
ついには鼻を寄せてくるともやに楽しそうに笑っていた。
 
「しんけん、ごめんな、知弥」
「なんくるないさー」
昼間は真っ青な海が夕陽のオレンジ色に侵食されていて、空の水色も濃紺に染まり始めていた。
ともやが逃げ出して新垣が抱き上げてからは、また逃げ出してはいけないと、
今日はずっと新垣がともやを抱いたままでいる。
「本当、いつもはおとなしいんやしが…」
呟かれた新垣の言葉に、光に照らされた髪を見ていた不知火は、ふっ、と視線を落として、
腕の中にいるウサギに目をやった。
すると、一部のズレもなく視線が交差し合う。
またしても感情が垣間見えるようでじっと瞳を見てしまう。
『ともやは一人でいいのにぃ』
耳に直接聞こえてきた声に反射的に、バッ、と耳を塞いだ不知火に、
ともやは、ふいっ、と視線を外し、新垣は「ぬーっ、知弥!?」と声を上げた。

あとがき

No.31|比嘉。Comment(0)Trackback()

更に変。(変。の別視点)

2008/03/10(Mon)22:07

新不知?(会話文)
 
「知弥~、…悪戯する~」
「ぬーする?」
「掘る」
「掘…?」
「うん」
 
「…知念クン」
「ん?」
「あの二人は一体何話してるの?」
「?」
「掘る、って何…ていうか不知火クンのほうが…?」
「永四郎? 何、項垂れてるんだばぁ?」


あとがき

No.27|比嘉。Comment(0)Trackback()

実験。

2008/03/02(Sun)23:40

知凛
 
部活の終わった帰り道。知念と平古場は一緒に帰宅していた。
風の良く吹きぬける見晴らしのいい道を、隣り合いながら歩く。
楽しそうに話をする平古場に、その話に微笑みながら聞き、時折相槌を打つ知念の姿は、
もういつものことで見慣れたものだ。
平古場が話すのはクラスメイトのことや部活での話、家であった家族の失敗談などだ。
「でさー・・・」
笑って肩が揺れると、平古場の長い金色の髪が一緒に揺れる。
ふと、話ながら平古場が知念を見上げると、その表情が曇っていることに気がついた。
ゆっくりになっていた知念の足取りは、平古場が止まったことで一緒に止まった。
ぼうっと地面に視線を向けたまま、知念は無言で立ち止まる。
「知念?」
「凛」
「へ? ちょっ、んん!」
急に後頭部を掴まれ、視界に影がかかったかと思うと、キスをされていた。
「…、ぷぱっ! いきなりぬーするんさ、知念!」
「…いや、今唐突にキスってレモン味がするだと言ってた気がして、疑問になって…」
「だからってすんな!」
罵声を浴びせながら平古場は知念の尻に蹴りを入れる。
たたらを踏む知念を尻目に、平古場はズンズンと歩いていってしまう。
昔から、おとなしいかと思えば、自分の気になることは徹底的に行動に移して確かめる癖のある
ヤツだと思っていた…人が見えなかったのは救いだが…こんな往来でされるのは心臓に悪い。
しかも「キスはレモンの味」などと、そんな一昔も前の噂のために、されるなどとは。
「ふらーが…!」
嬉しいようなムカツクような感情が湧きあがって、胸の辺りがムズムズする。
いつの間にか火照っていた頬に風が当たって、いつも以上に風が冷たく感じた。
自分より背の高い知念のことだ、
きっとあの長身に見合った長い脚ですぐ追いついてしまうのだろう。
肩に触れて引き止められたら、もう一度だけ蹴りを入れて許してやろう、と平古場は思った。
足音が近い。
「凛」
風になびいた髪に、知念の手が触れた。

あとがき

No.25|比嘉。Comment(0)Trackback()