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雑文。

雑記と主にテニプリ&気の向くままのジャンルのSS(ベーコンレタス)を置いています。

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Call me whenever you feel lonely.

2008/09/26(Fri)21:48

不知新
 
携帯のランプが光ったのは、深夜零時を過ぎた頃だった。
ディスプレイを見てみると、メールではなく着信であり、俺は慌てて電話に出る。
「もしもし」
声が裏返りそうになりながらも、はっきりと告げた言葉の次に、
相手から紡がれた言葉はなかった。
無言の中に機械のノイズが混じる。
ノイズが聞こえると言葉を発することに躊躇してしまうのが人間の性だろう、
ずるずると無言が続いてしまう。
悪循環。
と、向こうで空気の動く音がした。
その音は息を吸う音だった。
しかしそれでも言葉が紡がれる気配がしないため、
相手が息を吸い込んだのを無理矢理音なのだと理解し、
相手は喋ったのだと自分を少しだけ騙した。
音がないと喋りにくいのなら、無理にでも音を作るまでのこと。
「浩一…どうした?」
瞬間、向こうで空気が止まるのが分かった。
きっと息を詰めたのだろう。
「あ」
意識せずに洩らしたのだろう言葉には、安堵と不安が隠(こも)っていて、
次にはあわあわと自分が洩らしたその単語をかき消すように言葉を紡いできた。
「なんでオレだって…」
「ディスプレイに表示されるだろう」
当たり前のことを不思議そうに言われて、思わず至極真面目に返してしまった。
するとまたノイズが聞こえはじめてしまう予兆があったので、急いでこちらから言葉を紡ぐ。
「で、どうしたんだ?」
「あー…んー…」
歯切れの悪い言葉に眉間に皺が寄るのが分かる。
何かあったのだろうか。
「いや、んー…あー」
尚も続く感動詞の羅列に、ふと、昔のことを思い出した。
小さな頃、こうやって電話を掛けてきては、
ずっと何も言えずにあー、うー、と必死に言葉を紡いでいたことを。
あの頃は、何故電話を掛けてきていたんだったか。
「あの、知弥」
「ん?」
「あ、いや、何でも…」
言い淀む浩一に、先ほどの思い出を追って、ある言葉が頭の中に浮かんできた。
小さな浩一が、小さな声で、言った言葉。
変わらない、と言ったら怒るだろうか。
「Call me whenever you feel lonely.」
「え?」
目を丸くした姿が、携帯越しにはっきりと見えた。 
 
 
携帯のメールを使ってちまちまと打っていた文章です。不知新!
しかし私の携帯は「何処も」なので、半角500文字までしか打てないのが難点でした(苦笑)
本当はもうちょい短い小話の予定だったのですが、久しぶりに書いたためか、
手がノッてしまって結構長い文章に・・・でも好きな話として書けたので満足です!
 
『Call me whenever you feel lonely.』は、
「淋しいときはいつでも電話しておいで」という意味です。
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No.58|比嘉。Comment(0)Trackback()

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