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雑文。

雑記と主にテニプリ&気の向くままのジャンルのSS(ベーコンレタス)を置いています。

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2024/11/22(Fri)15:36

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入道雲。

2008/11/12(Wed)22:21

銀謙
 
空は高く、からりとした青が視界に広がる。
時折真っ白い雲が青に映えた。
速さは陽気に似合いゆったりとしていて、陽が射す中で伸びをすると、
縮こまっていた皮膚の隅々にまで太陽の光が当たるような気がした。
上がっていた踵をつき大きく息を吸い込むと、
雨上がりのあの独特な、水分をたっぷり含んだ空気が身体の中に入ってきた。
雨のせいで溜まっていたもやもやを洗い流してくれそうだ、と謙也は思った。
その原因は、その雨だったのだが。
今日は久しぶりの晴れで、そして久しぶりの部活だ。
久しぶりと言うにはどうにもおかしいが、雨の間、室内の練習だけだったので、
外を走り回ってテニスをするのが好きな謙也には、今日の晴れが何よりのことなのである。
晴れた空をもう一度仰ぎ見ると、先ほど見上げていた時には視界になかった、
真っ白く大きな入道雲が視界の左端に見えていた。
入道雲は青に埋もれることはなく、むしろ青に推されるような、
また、青の存在を知っているかのように堂々と自分を誇示しているような、そんな感覚があった。
何や、誰かに似とるなぁ。
その白さや堂々とした出で立ちに白石が頭に浮かぶが、
どこか違って、空気の中へ放ってしまう。
ふわふわとゆったりした感じに千歳が頭に浮かぶが、
これも違い、空気の中へ。
あの誇示した感覚に金太郎が頭に浮かぶが、
白という色が絡まず、また空気の中へ。
誰やろか。
足元でバシャバシャと水と弄び、頭を捻りながら部室に向かうと、扉の前で声を掛けられた。
低く、されど心音のように安心できる声。
「ああ謙也、遅かったな、もうみんなコートに行っとるで」
ああ、そや、分かったぞ。
「謙也?」
全速で駆け抜けた先には先ほど踏んだ水溜り。
しかしそれをも越えて駆け抜けると、眼上にあの大きな白い入道雲。
「入道雲を見て思い出すなんや、重症やろー!」
大きく叫ぶが、空と雲の大きさには勝てず、声は空気の中に拡散された。
 

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あとがき

No.59|四天宝寺。Comment(0)Trackback()

何で、

2008/05/11(Sun)12:02

副光(会話文)
 
光「先輩」
ユウジ「何?」
小石川「ん?」
光「あ、小石川先輩の方っす」
ユウジ「お前、分かりにくいから名前呼べや!」
光「はいはい、すんませんでした、ユウジ先輩」
ユウジ「この・・・!」
小石川「で、何の用や財前」
光「ああ、そでした」
ユウジ「俺を無視すんなー!」
小石川「一氏、金色が呼んどるで」
ユウジ「あ、マジか。小春ぅー!」
光「単純っすね」
小石川「こら。で、何や?」
光「このあと、打ち合いしてくれません?」
小石川「ええで」
光「・・・」
小石川「まだ何かあるんか?」
光「いや、何でもないです」
小石川「その割には何か言いたそうな顔しとるで」
光「・・・、ただ」
小石川「ん?」
光「あんまり話してほしゅうないだけです」
小石川「一氏とか?」
光「誰とでもです」
小石川「ん、気をつけるわ」
光(何でこの人は、俺の言うことをわがままだと思わないのやろ・・・)


あとがき

No.49|四天宝寺。Comment(0)Trackback()

知るのは数時間後。

2008/02/06(Wed)22:46

副光・小石川誕生日文
 
「早ぅございます、副部長」
休日の朝早く、小石川家のインターホンを鳴らしたのは、小石川の後輩兼恋人の財前だった。
夜遅くまで受験勉強を行い、起きたのはいつもより多少遅い時間だったが、
そのおかげで起き抜けに応対をすることになった小石川は、
驚きすぎて一気に目を覚ましてしまった。
「財前…どないしたん? てか、どうして俺の家…」
「部長に聞いたんですわ。勝手に押しかけてすんません」
あぁ、それで。どうりで教えたこともないのに知ってるはずやわ。
まだ、ぼぅ…、としたままの頭でもきちんと財前の言葉を理解し、いや、ええよ、と言葉を返した。
しかし疑問が湧く。
もう自分は部活を引退したし、今日は特に約束をしていたわけでもなかった。
世間的な行事があるわけでもなく、一体何の用で自分の家に来たのか、頭の中を巡らせる。
が、その疑問が形を成す前に、小石川の身体を寒さが襲う。
ドアを開けておくために支えていた腕に鳥肌が立ち、背筋にも悪寒に似た寒さが駆け上がる。
決して薄着をしていたわけではなく、きちんとカーゴパンツとトレーナーを着込んでのことだ。
そしてふと、自分よりも長く外にいる財前に目が止まり、
自分より着込んでいるのは見て取れたが、身体は冷えているのでは、と心配が頭をよぎった。
「財前、寒ぅないんか? 良かったら中入って…」
「いや、用はすぐに終わるんで、えぇですわ」
自分の言葉に被さるように言われ、小石川は返す言葉をさがす間を失ってしまった。
小石川は次に言う言葉をさがしているために口を噤んで、
財前は何かを言いよどんでいるのか閉口したままで、二人の間に沈黙が落ちる。
耳元を硬い風が吹き去ってゆく。
「あー…」
先に口を開いたのは財前だった。
下に向けていた視線を上に上げて、自分より高い位置にある瞳へと視線を向ける。
ガサッ、と音がし、小石川は財前が持ち上げた袋に目をやった。
袋には、自分の母親のよく利用するスーパーのロゴが入っていた。
「これ、特に何も思いつかなかったんで……好物だって聞いたんですわ、どうぞ」
「え、あ…おおきに」
目の前に差し出された袋に一瞬驚きながらも、
財前は、それじゃあ、と言って小石川家から離れていった。
小石川は何がなんだか分からぬまま、
財前の姿が見えなくなってから家の中に入り、自室に戻った。
二階にある自室に入ると、ベッドの上に放ってあった携帯のランプが赤く点滅していた。
赤く点滅するのは着信があることを知らせるもので、ディスプレイを見てみれば、
それは同じ部活で部長をしていた白石からの着信だった。
すぐにリダイアルを押すと、時間が経っていなかったためか、白石はすぐに電話に出た。
『あ、コイ? なんや、さっきは電話に出ぇへんかったやん』
「あー、ちょっと外出てて…」
『そうなん? まぁええけど。あ、でなー…』
白石の電話の内容は、受験が一段落したら一度部活に顔を出してみないか、ということだった。
それから他愛のない話が続き、その間に小石川は財前から貰った袋の中身を出してみた。
入っていたのは何の変哲もない…パセリ。
「あ…あー…」
『でなー…ん、どないしたん?』
「いや、さっき財前からモノもらったんやけど…パセリやった」
『オマエの好物やん』
「いや、そうなんやけど、なんでやと思う?」
『…、気づいてへんの、オマエ』
「何がや」
『それともワザといってんのかぁ?』
「だから、なんやねん、て」
『はぁ』
元より財前と小石川のことを知っていた白石は、
財前に小石川の家を教えた時点で気付いていたのだが、
まさか小石川自身が気付いていなかったとは思わなかった。
しかし自分から教えるのも癪なので、なんでもない、と話をはぐらかして電話を切った。
その夜、自分の家族に誕生日を祝われ、
やっと財前がパセリを寄こした意味を小石川は知ることになる。

あとがき

No.22|四天宝寺。Comment(0)Trackback()

建前のおめでとう。

2008/01/26(Sat)22:25

銀謙
 
「あ、あのさ、銀。今日、銀の誕生日やろ? やからさ…ちーとばかしだけ、試さへん?」
紅潮した頬を隠しきれていないが真っ赤な顔をして、じっ、と目を合わせられて言われた言葉に、
銀の頭の中に疑問のマークが幾つも浮かび上がる。
今日が自分の誕生日ということで、
受験シーズンの最中であるにも関わらず祝いに来てくれた恋人から、
つい先ほどきちんとプレゼントは受け取ったし、祝いの言葉も貰った。
今更何を試すと言うのだろうか。
思うが早いか言うが早いか、銀はすぐに疑問を口にしていた。
「試すって、何をや?」
「いや、だから、誕生日やし…」
もごもごと俯きながら喋る謙也に、誕生日で他に何かすることがあったか? 
と考えをめぐらせるが、一向にその答えは出てこない。
そもそも『試す』という言葉自体から、全く何も想像が出来ないのだ。
普段あまり物事に執着しないからやろうか、と心の中で息づいてみるが、
それで言葉の意味が解決されるわけではなく、かといって今、
目の前にいる人物からこれ以上聞き出すのは難しく思えた。
謙也が下を向いていてこちらの行動が見えないことを承知で、その様子を窺う。
さっきは頬だけが紅くなっていたのに、今は耳までほんの薄っすらと紅く染まっていて、
口の中は未だに何かを呟いている。
座高が違うためにその声は聞き取れないのだが、
とりあえず謙也が大声では言えないようなことだろう、とやっと見当がついた。
「謙也」
名を呼んでみれば返って来た声は心なしか裏返っているような気がした。
それはまぁ、急に話しかけられればそうなるだろう。
「な、何や…っ?」
「言いたいことが何なのかはよぅ分からんのやけど、とりあえずワシは何をすればええ?」
相手がしたいことで自分がどう行動すればいいか分からない以上、
相手のしたいようにさせればいいと結論づけた銀は、そう謙也に言い放った。
言われた謙也は今までの紅さとは比べものにならないほど真っ紅になる。
パクパクと金魚のように…しかしものを欲しているのではなくただ驚いて…口を開閉し、
居場所を捜し求める手が空中を彷徨っていた。
あ、だの、わ、だの、焦って上手く言葉が纏まらず自然と漏れ出してしまう言葉に、
恥ずかしくなってまた自分で焦ってしまう。どうしようもないくらい空回りしていて、
変なことを望んだから神様が怒ったのやろか、と本気で心配になった。
それでも、ぎゅ、と目を瞑り何とか自分を落ち着けて息を整えると、
目の前に座る銀に指示を出した。
「…やったら、目ぇ瞑ってくれる?」
「ん」
さっき言った言葉の通り…意味が分かるまでではあるが…全て謙也に任せるつもりなのか、
銀は従順に目を閉じた。
目を閉じたその顔の造形に、きゅ、と謙也の心臓が持っていかれる。
外国人に媚びない日本人特有の格好良さを持った、芯の真っ直ぐとした鼻と、
すこし幅の広い唇。眉は短めだけれども、きっちりと尻の上がった柳眉で。
最初に惹かれたのはこの顔だったと、口端に淡い笑みを乗せた。
その顔は、謙也の視界をどんどんと侵食していった。視界という画面を全て占領したかと思うと、
画面をはみ出しても尚、占領をし続ける。
胡坐を掻いた銀の足に片手を置くとそのまま身を乗りだす。
画面いっぱいにあった銀の顔は自分の瞼で隠された。自分の薄い唇が銀の唇にあたる。
途端、肌を通して、息を詰められたのが分かった。
それでも自分の勇気を一生分使い切る覚悟で幅のある唇を舐め上げる。
何度か角度を変えて唇を合わせたらまた舐め上げて。
心臓がバクバクいっているのも分かるし、
頬が燃え尽きそうなほど紅潮しているのも分かっている。
乗り出した身体を支える腕も緊張で震えていた。
でも、好きな人を触れ合えていることのほうが、謙也にはすごく嬉しいことだった。
自分の唾液で湿った唇たちが触れて離れる際に、
ちゅ、ちゅ、と音を響かせて来た頃、謙也はそっと瞼を上げて銀の様子を窺った。
すると銀鼠色の瞳と視線が合う。
ずっと見られていたのかと驚いて唇を合わせたまま硬直していると、
薄開きになっていた下唇を噛まれた。
その後は肉食獣が獲物を確かめるかのような感じで噛まれた部分を舐められる。
ゆっくりと、時間をかけて。
ゾクゾクと悪寒と似ているけども違う痺れが背筋を通り抜けて、手には無意識に力が入るのに、
脚は自分の言うことを聞かず力が抜けた。そのまま床に座り込んでしまう。
「ぎ、銀…!」
「意味、やっと分かったで」
そう言って小さくキスをしてくる銀に、一気に緊張の糸が切れた謙也は叫ぶ。
「せやかていきなり…っ、あぁもうえぇわ!」
 
真っ紅になって嬉しさと恥ずかしさのあまり縮こまる謙也に、銀は愛おしさを感じる。
こうして自分のために祝いに来てくれたことに。


あとがき

No.21|四天宝寺。Comment(0)Trackback()

伝えたい、伝えられない。

2008/01/02(Wed)13:46

銀謙
 
「銀、好きやでぇ~」
「ほんま謙也は師範が好きやなぁ」
冗談だと受け取る仲間と意中の相手。
苦しく思うこともあるけど、俺は言うのを止めへん。
馬鹿けたように笑って大声で。
 
「銀、好きや」
二人きりで居る時も笑って言う。
いつもは苦笑して返事してくれるのに、今日は違った。
あきれたような顔で、拒絶する顔で、口を開いた。
「なぁ謙也。冗談で好きや言うの、止めたほうがえぇで。他の女子らが悲しんどる」
銀の言葉に身体が動かせなくなる。言葉も発せない。
悲しませるて・・・銀のほうが悲しませとるやん。
ただ銀の行動を目で追うだけしかできんくて、銀は着替え終わって扉に手をかけてた。
「ほな、お先な」
一礼して出て行く背中に、やっと身体が動いた。声も出せた。
「愛してる言うたら、銀は俺を好いてくれるんか!!」
外に聞こえてかまへんくらい大声で叫んだ。
銀が戻ってくることはなかったけども。 

あとがき

No.6|四天宝寺。Comment(0)Trackback()