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雑記と主にテニプリ&気の向くままのジャンルのSS(ベーコンレタス)を置いています。
2008/01/01(Tue)17:48
副光。
無数の電波が飛び交うと思われる年の変わり目に、財前の携帯にもいくらかの電波が入った。
テレビをつけたままだったので、バラエティの司会者が『今、年が明けました!』などと言い、
観客や他の出演者も我さきにと言葉を口にしているため、
着信音はそんなに五月蝿くは聞こえなかったが、普段だったら近所迷惑になるだろう。
財前自身はセンターで混むだろうと考え、
三十分くらい経ってから用意していたメールを送るつもりだった。
ぴったりに送ろうとして戻ってきたメールを再度送るのは余計面倒だからだ。
年賀状は携帯を持ったときから書いていない。
(よくぴったしに送れたなぁ…。)
自分がメールを送るまで時間もあるため、二十通弱も来たメールに目を通す。
(謙也くん……部長…絶頂て…学習せぇへんなぁ、この人。
……オサムちゃん…うわ、写メ付きで来おった!……誰やコイツ…。)
文字だけのモノクロなメール、絵文字が沢山使われた目に痛いメール、
自分や周りの景色をとった写メ付きのメール…
個人の特徴をよく出したメールに共通するのは、『あけましておめでとう』の文字。
ちなみに財前自身は文字だけのモノクロメールを送るつもりだ。
年越しも何をするでもなくマイペースに過ごしていた財前には、
やっと年が明けたことを実感させるものとなった。
全てのメールを読み終わり、テレビからの声もだいぶ治まってきて、
時間もちょうどいいと思い送信ボックスを開いた瞬間、
ディスプレイに『新着メール一件』の文字が浮かんだ。
名を見ると、あまり見慣れない名前ではあるものの、よく知った人物からのメールだった。
部活の先輩であり、部を支える副部長・小石川からだ。
普段メールを交わさないことも手伝って物珍しさが胸を廻(めぐ)る。
しかし開けて見れば『あけましておめでとう』の文字が目に入り、物珍しさは姿を消した。
石田の次に律儀な小石川のことだ、当たり前といえば当たり前のものなのだろう。
シンプルな文字だけのメールを読み終わると、財前は新規メールを作成し文章を打ち込むと、
元から用意してあったメールとともに送信した。
迷っている間にもうとっくに新年は明けていた。自分の不甲斐無さに溜息が零れる。
一向に変わらない携帯画面を見ては、また溜息を吐(つ)く。
あと一回ボタンを押すだけだというのに、それがなかなか出来ない。
年の変わりとともに送られてきた祝いのメールは受信ボックスに仕舞ったままで、
まだ目を通していない。
律儀に時間とともに送ってくれた友人たちに罪悪感を感じながらも、
自分の送信すべきメールに集中する。
通常ならば年賀状を出す、それだけで終わるはずだった。
しかし住所を知らなかったためにこの状況に至るのだ。
それでも住所を訊くときも今と同じ状態になった姿が脳裏に浮かび、
顔を直接見なくて済むこちらのほうが良かったのかも知れないと思う。
「情けないわぁ…」
無意識に自分で呟いた言葉に虚しくも賛同してしまった。
一度画面から目を離し、一呼吸吐(つ)いて、利き手の親指に全神経を集中させて、
息を飲み、ボタンを、押した。
画面に浮かぶ『送信しました』の文字に安堵の笑みが浮かぶ。
数十分間の己の格闘の末、やっとメールを送れたのだから無理もない。
(てかこんな思いするんは、女だけで十分やろ……。)
惚れた弱みかと思い、その考えを破棄した。
ベットに寝転がり、仕舞ったままだったいくつものメールに目を通す。
数分して財前からのメールが来ることも予想せず。
No.2|四天宝寺。|Comment(0)|Trackback()