不知新
やっとのことで追い抜いた知弥に振り返って自慢しようとしたとき、僅かな段差に躓いた。
痛さを髣髴とさせる音が至近距離で聞こえ、
一瞬の思考の後、やはりいたるところを擦りむいた痛みを感じた。
「浩一」
何だか情けなくて、顔を上げて視線を合わすのが嫌だったけれど、
痛さのせいで手を貸してもらわないと立ち上がれなかったため、
ゆっくりと顔を上げ、手を伸ばした。
手が不自然な位置で止まる。
知弥の目が、かち合った視線が、今まで見たことのない強さを孕んでいた。
見下す、という形容が合うのだろうか。
優しさの片鱗も見えず、胸がぶるっと震えた。
見下されたための本能的な強さへの恐怖心なのか、受けたことのない視線への恐怖心なのか、
どちらにしろ恐怖と形容する術しか知らなかった俺は、その時の知弥が怖くて仕方なかった。
その後、優しく手を差し出して、知弥は俺を立ち上がらせてくれた。
昔見た知弥の視線を、最近はよく見る。
試合の時、相手に送る視線が、それとよく似ている。
知弥は敵ではなく、むしろ自分の頼もしいパートナーだ。怖くなどない。
しかし時折、その視線を一心に浴びてみたい気がする。
そのために、対戦相手の学校で自分が過ごしていたら、
もし仲間としてではなく知弥と試合できたら、などと「もしも」の話をいくつも考える。
それは恐怖心も好奇心も不安も交え、そして確信を持ちたいがためでもあった。
今思い返せば、あれは知弥の雄としての目だったのだ。
それに胸を震わせた俺のあの時の怖さと形容した感情は、
実は支配される快感を感じ取っていたからではないのだろうか、と。
「知弥、俺が比嘉中に行ってなくて、試合で俺と試合することになったら、本気を出してくれる?」
「何言ってんだ?」
床に寝そべっていた俺を覗き込むように知弥がベッドの上から顔を出した。
ああ、見下ろされている。
「いいから」
「まぁ、お前は強いしな。本気で試合するさ。
それに、試合するのに本気を出さなかったら、相手が誰だろうと失礼だろう」
「そうか。そうだよね」
言葉の後半に本気の意を視線に込めて知弥は答えてくれた。
「その前に、お前がどこかに行くなんてこと、させないがな」
その視線のまま言葉を紡ぐ知弥に、俺はますます逃れられなくなり、支配されていく。
ちょっとMっぽい新垣を書いてみたかったためのお話です^▽^
…私、Mを穿き違えてる気がする…そして今回に限って不知火が喋りすぎたw
無口ってか寡黙キャラだったハズなんですがねぇ、当サイトでは。あれー?
そして本編では書いてないですが、不知火は新垣を見下すのがちょっとお気に入りです(笑)
そんなプチSMな二人が大好きですv
こんなこと↑書いてたら新垣or不知火ファンから批判がきそうだ…。
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