白玉×錦織
※昔の勘違いで白玉が山吹に所属していたことになっています※
日も暮れ、夕日の橙が秋の色に染まってきている頃、
部活を引退する三年生のための引退試合が山吹中のコートで行われていた。
無礼講なこの引退試合で三年生をコテンパンにしようと一、二年は意気込むが、
はやり三年生の力というのは強く、それを肌で感じ次の成長へのステップとするためにも、
この引退試合は毎年続けられている。
無論、三年生も全力で後輩たちと戦ってゆく。
「白玉先輩」
コートで試合後の片付けと調整をしていた三年の白玉に声をかけたのは二年の錦織だった。
いつもは溌剌と人懐っこい笑みを浮かべる錦織は、
このときに限って俯き、顔に影を落としていた。
「ん?何だい、錦織」
「ちょっと、いいですか?」
「うん。部室で待ってて」
「はい」
影は錦織の顔だけではなく、心の中にもその存在を落としていた。
終わらせるのだ、と、そう心に決めていた。
「で、何かな」
十分もしないうちに部室へと来た白玉は、見透かすように、
なんとなく悲しそうな笑顔で錦織と向き合った。
その顔に決心が揺らぎそうで…それでも錦織は口を開いた。
「…僕たち、もう終わりにしませんか?」
「男同士の恋愛には厭きたか?」
「そうじゃないですけど…」
今、錦織の胸の中には二人の人間がいる。
片方は白玉、もう片方は最近胸の中に入ってきた日焼けした肌が目を打つあの子。
白と黒、極端に見える二人を錦織は同じ濃さで見ていた。
しかしそのうち黒が勝(まさ)った。
白玉の姿が、影が、今こうしてはっきりと見えているのに、
思い浮かべようとするとふいっと揺らぎ消えてしまう。
要するにその存在に心が揺れ動いてしまったのだ。
そうなってしまえば、あとは互いに辛くなっていくだけだと思ったと同時に、
自分だけならまだしも、白玉にまで辛い思いをさせてしまうのは心苦しかった。
「白玉先輩のことは今でも好きです。それは変わりありません」
本心を告げた。
数秒…一秒もなかった沈黙に、身体のどこかがおかしくなりそうだった。
「…どうして、って訊いても?」
答えられなかった。
「うん、君がそうしたいならそれでいいよ」
「白玉先輩」
「でも最後に、いい?」
部室に来たときから変わらぬあの悲しげな笑みのままで白玉が言ったことを、
錦織は拒否することは出来ず、返事も出来なかった。
それでも伝わってしまっているのだろう、錦織の心は。
離れてゆく熱に終わりを感じ、
それは、二人で触れ合った口づけの中で、一番悲しい口づけとなった。
「もう一度訊くけど、俺のこと嫌いになったわけじゃないんだね?」
「はい」
「そうか。今までありがとう、翼」
「僕こそ」
「いつでも横は空けておくから。次の恋人できなくて淋しくなったら、いつでもおいでよ」
格好つけた言葉だと客観的に見ていたら思うであろうその言葉も、
今までずっと近くにいた錦織には、白玉の最大の優しさであることが痛いほど身に感じ取れた。
これで良かった、これが、良かったことなんだ。
扉を開け部室を出て行く白玉の姿はこれで見納めとなる。
白玉は三年で、引退試合も今日したのだ、
これからは自分たちが部を引っ張っていかなければいけない。
このタイミングで白玉に告げたのはきっと、
これから白玉と顔を合わせることが極端になくなることを分かっていた自分の弱さなのだと、
錦織は胸の痛みで自覚した。
こんな僕を好きだと言ってくれて、ありがとうございます。
白玉の優しさへの感謝と、胸の痛みも相俟って、涙が夕日の光を吸った。
昔(二年くらい前)に書いた簡略文(会話と多少の背景描写があるだけのもの)を書き直してUP!
事の始まりは、錦織にハマってハマって仕方なくって、どうしても錦織×室町を書きたくて、
どうしようかなと思ってたときに、ネタで喧嘩(というかすれ違い?)みたいなのが浮かんで
勢いだけで書いてしまったのが、事の始まりです(笑)
なので、CP表記で「白玉×錦織」って書いてあるのですが、
本当は「白玉×錦織前提(というか過去に付き合ってたことが前提)の錦織×室町」
というのが本当のCP表記なんです(苦笑)
一応昔のは残っているのでこの続きもあるのですが、今のところ書き直す気はないので、
何か要望があったら続きも書き直そうと思います。(書き直すのが案外難しかったため)
あ、白玉が山吹に所属していたことになっているのは、昔の私の過ちです。
みんな、騙されないでね☆(←
あ、なんでこの話を書き直したのかといいますと、相互させていただいている
ソライロクレヨンの広立さんへのワイロ(?)です。
い、いかがですか・・・!?
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