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雑文。

雑記と主にテニプリ&気の向くままのジャンルのSS(ベーコンレタス)を置いています。

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桃色。桜。(過去サイト作品。)

2008/05/03(Sat)16:04

一啓(BLEACH)
 
「うっはー、キレー!」
桜の花びらが舞う道で両手を広げて廻ってみせる姿は、とても可愛く見えた。
桜の花びらが舞う道で自分を見ている立ち姿は、とても格好よく見えた。
「ほらほら、一護! 桜!」
「おー、転ぶなよー」
「わぁーってるー!」
大通りから逸れたわき道に、その桜の並木道はあった。
今まで通ったことがなく、一護と啓吾は散歩がてらその道を行くことに決めた。
決して距離は長くないものの、ゆっくり歩けば十分に桜を楽しむだけの距離はあった。
時間にして十五分ほど。
まだ八分咲きくらいの桜がすこし強めの風に吹かれて、薄桃色の花びらが空を舞っている。
その中に、啓吾は立っている。
そして一護も。
「しっかし誰もいないなー」
「確かにな」
「こんなにキレーなのになー、もったいねー」
真上から暖かく自分たちを照らす太陽の光と、舞い散る桜の花びらで視界は明るく綺麗。
だが、その道には一護と啓吾、二人以外の人の姿は見当たらない。
辺りに立ち並ぶ家々からも人の声と思われる音はしない。
二人きりの世界。
そう言葉にしてもいいくらい、人の気配が無かった。
一護が立ち止まっている自分の元に追いついていることを横目で確認すると、
啓吾はゆっくりと歩きだした。
それにつられて一護も啓吾の右側を歩き出す。
ふと、啓吾は一護の髪に目をやった。
違和感がある。
鮮やかなオレンジ色の地毛のなかに、地毛のオレンジ色だけではない色があったからだ。
「一護、ちょっぴりストーップ」
「あ?」
肩を掴むと同時に声を掛け一護をその場に止まらせると、
一護の頭の左側に右手を伸ばした。
一護の目が、不思議そうな目で啓吾の手の行く先を追う。
やがてその手を一護の目の前に差し出す。
「取れた」
「桜・・・?」
「ぷっ。子供みてー、頭に花びらくっつけてるってー!」
指先でつまんだ花びらを一護の目の前に掲げ、
腹を抱えてケラケラと笑い出した啓吾に一睨みきかせると、
一護は ん? といつもより眉間にシワを寄せた。
「うをぅ!?」
急に身体が傾いたことに声を上げた啓吾の頭に、一護の手が乗る。
一護が啓吾の右腕を掴んで引き寄せたのだ。
そのまま一護の手が、グシャグシャと啓吾の髪の毛をかき乱す。
「お、おい、一護っ?」
「取れた」
一護の指先にもつままれた桜の花びらが一枚。
その花びらを凝視する啓吾と、その啓吾の姿を見続ける一護。
やがて、どちらからともなく、ぷっ、と噴き出した。
ひとしきり笑うと、笑顔のまま、残りの桜並木を歩いて行った。
手をつないだまま。
桜はまだ風に吹かれていて、いくつもの花びらが空を舞う。
二人きりの世界と言ってもいいかもしれないくらい、二人以外のひとはいなくて。
並木道を抜けるというところで、顔を見つめ合わせ、軽くキスを交わした。
頬が桃色だったのは、桜のせいということにしておこう。
 


とりあえず春だったので書いたものです。

 

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