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雑文。

雑記と主にテニプリ&気の向くままのジャンルのSS(ベーコンレタス)を置いています。

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2024/11/22(Fri)15:42

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未完成ラブストーリー。

2008/01/02(Wed)13:39

鳳日
 

珍しく部活がない休日。
俺の家に遊びに来ていた鳳が、最終回だった恋愛ドラマを見終わった後、ポツリと言った。
『こんなに完璧な話なんてないのにね』
それには少なからず俺も同感する。
…ドラマは、鳳が見始めて暇になったので一緒に見ていただけだ。

二年になってすこし経った頃、俺は鳳に告白をされた。
確かに一年の頃は同じクラスだったし、同じ部活でもあった。
俺のことを見ている時間は十二分にあったと思う。
でも俺は、女子特有の柔らかさも持っていないし、
そんなにか弱いつもりも、女顔なわけでもない。
逆に、スポーツをやっているから筋肉も結構ついているし、目つきもキツイ。
でも、俺は鳳に告白されても、存外嫌な気持ちにはならなかった。
男同士なんてありえないと、その前まで何度も豪語していたにもかかわらず。
告白されたとき、俺は『分からない』と答えた。
鳳が『今の告白、嫌だった? それとも、別にどうともない?』と訊いてきたからだ。
案外、鳳は卑怯者だ。
それからすこしずつだが、鳳との距離が縮まっていった気がする。
そして、一度だけ唇を許した…というより、許させられた。
掠め取られるくらいの、不意打ちの簡単なキスで。
それでも嫌な気がしなかったのは、俺が鳳のことを許しているからなのだろうか。
 
「日吉? ひーよーし」
物事に耽っていたら、目の前に鳳の顔があった。
右手は俺の頭をぽすぽすと叩(はた)いている。
途端、無性に気に触れて、前に俺がやられたように不意打ちでキスをしてやった。
嫌じゃないのなら、一回しているんだ、どうってことない。
「どうした。動けないからそこをどけ」
目の前に身を乗り出していた鳳の身体を右手で押しのけ、立ち上がろうと片膝をつく。
力をこめ、前に体重を掛けながらあと一歩で立ち上がれるという時に、
鳳の腕が身体にまとわりついた。
「おい、鳳、離せ!」
「あははっ、本当に完璧じゃなさすぎ! 未完成すぎるよ!」
ね、日吉! と腹筋を最大限にまで震わせて、鳳は何が楽しいのか、
俺の腕に収めたまま大声で笑い転げた。
こういう時、鳳の体格が大層恨みがましく思える。
「名づけるなら、未完成ラブストーリー?」
何がだ。 

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あとがき

No.5|氷帝。Comment(0)Trackback()

傷ニ潜ム欲。(微々裏)

2008/01/02(Wed)13:02

鳳宍
 
目の前に晒された身体に残る複数の傷。
この人が自分に勝つためにつけた傷。
その傷をつけたのは、紛れもなく、俺。
「何、ジロジロ見てんだ」
「いや、ちょっと」
その傷を見るたびに、心の奥に湧き上がる『何か』。
複数の傷の中の一つに、口付けを落とす。
身体を一瞬強張らせ、弛緩させる。
声を殺す小さな声が、俺の頭の上の方からする。
普段の生活の中では見えない場所にある傷。
その在り処を全て知っているのは、俺だけ。
「っは…」
全て違う場所の傷に口付けをする。
何度も何度も、この人が拒むまで。
俺が知っているすべての傷に。
慈しむそうに、いとおしむように。
「おい…長太、郎…っ」
すこし息の上がった声で名前を呼ばれて、
俺は口付けするのを止めて、宍戸さんの瞳を見る。
宍戸さんの瞳はほんのすこし、揺らいでいた。
決して怯えとかの類ではなく。
「何ですか、宍戸さん?」
身体を上へ移動させ、唇に口付けを一つ落とす。
「独占欲出すぎだ、バカ。理由は何だか知らねーけど」
威力の弱いゲンコツを頭に一つ喰らってしまう。
宍戸さんは怒っても笑ってもいなくて、
ただ、ちょっと困った顔をしていた。
俺はすごくアホっぽい顔をしていたと思う。
だって、何だか宍戸さんに見ていてもらえたことが嬉しくて。
次の瞬間には最高の笑顔だったと思う。
「くすぐってーから、止めろ。いいな?」
それから俺は宍戸さんの傷に一回だけ口付けをして、
宍戸さんを愛した。 

あとがき

No.4|氷帝。Comment(0)Trackback()

抑圧。

2008/01/02(Wed)12:59

日滝 

「今までありがとう」
いつも強がってた俺の、最後の強がり。
すこしだけ、お前に罪悪感を与えるような言葉を。
「こちらこそ。今までありがとうございました」
そうだ、忘れてた。
お前も強がりだったね。
いや、意地っ張りだ。
「さようなら、『滝さん』」
あぁそうだ、お前は。
俺の名前を一度も呼んでくれたことがない。
離れてゆく背中を見ていることしかできなくて、
何となく無力感を感じる。
今なら、すこしだけ言葉にできる。
「好きだよ・・・大好きだ・・・っ」
気持ちが、涙となって流れ出した。 

あとがき

No.3|氷帝。Comment(0)Trackback()