山城→新垣 (不知新前提)
不意に見えるアノ笑顔は、俺の中をぐちゃぐちゃとかき混ぜる。
「山城、今どの行読んでる?」
振り向き終わらないまま口早にそう訊ねてきた新垣は、
国語の教科書を見せてきて、眉根を寄せる。
この間の席替えで、新垣の後ろになったのは、他人には自慢できない密かな幸福だ。
教科担任は他の生徒が読んでいるのを、教壇で教科書に目を落としながら聞いている。
困った顔は、あまり好きではない。
「聞いてりゃ分かるだろ」
「見つからないから訊いてるんだろう」
語尾を強めて言う新垣に、
今、教科書を読んでいるのが新垣の二つ前の席の奴だと思い出した。
どの教科でもたいして変わらないが、
席順に教科書を読まされるのが大概で、今も例外ではない。
苦笑を交えた溜め息とともに答えの箇所を指差すと、くしゅ、顔を緩ませて、
「にふぇーでーびる」
と笑い、また前を向きなおした。
読み手は新垣の一つ前の奴に変わっている。
少し経つと、今話した時とは違う声質で、新垣が教科書を読み始めるはず。
それまでの時間とその時間が、この退屈な授業の唯一の抜け道だ。
先ほどの笑顔が、意識せず頭の中に浮かんでくる。
からからと晴れ渡る空を頭に、大地をも揺らしそうなほど、皆が声をあげ練習が続く。
次の練習に移るまでのタイムラグ時に、
ふと、一枚の写真のように切り取られた空間が目に留まり、そのまま見入ってしまう。
辛くなることなど分かっているはずなのに。
新垣がいた。
不知火先輩がいた。
何を話しているかは、喧騒と距離の所為で分からない。
ただ、困ったように笑う新垣から幸せが溢れ出していた。
呼応する不知火先輩も笑っていて、その笑顔は、余裕さえ見えた気がした。
「新垣」
小さく零れた声は、届くはずがない。
困った顔は、あまり好きではない。
妄想って本当に怖いですね!
<妄想>新垣は二年生と三年生、どっちでもいいなー。とりあえず不知火と仲良ければいいよ!
そういやぁ二年生って山城もいたなー。山城も誰かとくっつけようかなー。
あ、同級生ネタやりたい! 同級生大好き! でも不知火がいる! うおーっ。どうしよう!
あれ・・・悶々とする山城よくね? あ、いいじゃんいいじゃんっ、よし、やっちゃおー!</妄想>
と、なんともまぁ痛いことから生まれました。
年明け初の更新がこれでいいものかと思いながらの更新です☆
今年もよろしくお願いします!
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