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雑記と主にテニプリ&気の向くままのジャンルのSS(ベーコンレタス)を置いています。
2009/07/06(Mon)21:39
No.69|比嘉。|Comment(0)|Trackback()
2009/06/08(Mon)01:41
比嘉オール(新垣誕生日文)
その日の朝、新垣は遅刻ぎみで学校に着いた。
珍しく朝練がない日だったので救われたが、朝練に遅刻なんて以ての外で、
席に着いたとき、二重の意味で安堵した。
「よ、ギリギリぐゎーやさ」
「あぁ。ウキミソーチ、山城」
席に着くと、同じ部活の山城が声をかけてきた。
部内は仲が悪いわけではないが、やはり二年のレギュラーが新垣だけということで、
二年の部員からの新垣への風当たりは多少強い。
その中で山城だけは準レギュラーであるためか、新垣と一番普通に接する。
同じクラスということもあり、二年の部員としては新垣ともっとも親しいだろう。
「なぁ山城、クリぬ~?」
「ぬーって…アカバナー」
「そうあらんくて。ぬーんちくまーんかいあるぬかってくとぅ」
新垣は机の上にある赤い切り花を指差した。
アカバナーは花びらも初々しいままで、どうやら朝のうちに置かれたものらしい。
花に罪はないので、仕方なしに机の横に置いたカバンの上にそっと乗せる。
「でぃっか。朝からあいびーたんしな」
山城の言葉を食いチャイムが鳴る。
慌てて小さく別れの言葉を告げ、山城は自分の席へと戻った。
しかし、一体誰が花を置いたのだろう。
チャイムが鳴った。
教科書を机の中に放り込むと同時に立ち上がり、
カバンの上のアカバナーをそっと持つと、カバンを背負い上げ教室を出た。
廊下を歩くと、窓から差し込む光が真っ直ぐで、淡い雲だけがその真っ直ぐさを和らげている。
今日も海水と太陽に身体を預けるとなると、
いささか自分が手の中のアカバナーのような植物になったように感じられる。
部室に辿り着くと、歓迎できないような事態が待っていた。
赤く目立つのは手の中のものと同じ、二つのアカバナーだった。
嫌がらせ、なのだろうか。
「や、新垣」
「おー、新垣ー」
「はいさい、甲斐先輩、平古場先輩」
自分のロッカーの前に立ち尽くしていると、
甲斐と平古場がユニフォーム姿でドア付近に立っていた。
何か違和感を持っていると、いやに楽しそうに二人の口角が上がっていることに気がついた。
「クリ、甲斐たちがやったんやいびーんか??」
「ゆたさんや、あらん」
そう言っても後ろの平古場が堪えきれずに笑っているのだから、信じろというほうが無理だろう。
どう言ったものか考えていると、甲斐もつられて笑う。
これ以上訊いてものれんに腕押しだと感じたので、おとなしく引き下がり、用意を始める。
正直、部活の開始時間に遅れるのは避けたい。
用意が終わり、二人を礼をし部室を出ようとドアノブに手をかけようとすると、
ドアノブが手のひらから逃れていった。
開く音の後には眩しい太陽の光、
そう思い目を細めると、不思議とかげったままで光は降ってこなかった。
「裕二郎、凛、部活始まるぞ」
本当はドアノブが勝手に逃れたわけではなく、知念がドアと開けたからで、
光が来なかったのは、知念がドア前で立っていたからだった。
「知念先輩、はいさい」
「…あぁ、新垣」
用件を言ったからその場から立ち去るのかと思っていると、
知念は逆に部室の中に入り自分のカバンを探り始めた。
甲斐と平古場は用は終わったというように、知らぬ間にさっさと部室を後にしてしまっている。
「待ってろ」
部室を出ようにも先輩に出て行かぬように言われてしまっては、
出て行くわけにはいかない。
がさごそと探る音が届くが、乱暴な音には聞こえないので、
手荒には扱えないものだと推測できる。
しかし新垣が知念に何か貸した覚えも、貸される覚えもないので、
知念の行動がいまひとつ分からない。
学年も違うので、学年配布物だとも思えない。
「クリ」
「…アカバナー?」
「部活、始まるぞ」
四つ目のアカバナー。
表情を作るなんて出来ず、ただ手の中に納められたアカバナーを凝視する。
一声かけ、知念は部室を出て行ってしまう。
続くアカバナーの贈り物に疑問と不安を覚えるが、
それよりも先に部活に参加することのほうが先決だった。
不思議なことが続く恐怖よりも、顧問や主将のほうが数倍も怖いからだ。
「にふぇーでーびたんー!」
髪から海水を散らし、部員全員が思い思いのペースで浜へ向かっていく。
顔を上げた途端、髪を伝ってきた水が口にかかり、煩わしくて手の甲で拭った。
ぼうっと沖を眺めると、いつものことだが夕日が海に身体を浸していた。
いつもこの地に身体を置いているから忘れがちだが、
この地はこんなに綺麗なものなのだと、時折改めて感じることがある。
息のしずらさに酸欠の一歩手前のような感覚を覚え、
新垣は深く息をしながら浜へ向かい、帰る準備のため部室へと足を速めた。
「あ、新垣、まやっさー居たか」
良かった良かったと笑うのは田仁志。
ほとんどの部員は帰ったようで、残っていたのは数人のレギュラーだった。
「ほれ、クリ」
「ああ、俺も渡し忘れてましたね。おめでとうございます」
固まってしまった。
全部で六つになったアカバナーの花。
他の部員…たとえば甲斐たちの悪ふざけだけだとしたらこのことは悪戯だと思えたのに、
主将の木手までもがアカバナーを渡してきて、新垣はいよいよ考えることを放棄しようとした。
ましてや田仁志までもが渡してくる時点で窒息しそうになった。
なんなのだろう、今日という日は。
「え、あ…アヌ」
「それじゃあ。不知火くん、鍵頼みましたよ」
扉が閉ざされて、疑問も胸の中のわだかまりも消えぬまま、
不知火と新垣を残し、他の部員たちは連れ立って帰ってしまった。
この六つもあるアカバナーをどうしろというのだろう。
「新垣、とりまへーく用意してくれ」
「あ、うん」
幼馴染みに迷惑をかけるわけにもいかないので、すばやく用意をはじめる。
早めに部室を出たつもりだったのに、鍵を返しに行ったりしたためか、
もう太陽は海のなかに潜っていた。
「あー、暗い」
「日や伸びてきやしがな」
「だぁと同時んかい部活ぬ時間も伸びやしがな!」
他の三年生と話していたらこうもいかない会話の続きように、新垣はほっとした。
昔から一緒にいた不知火だからこそ多少の変な話題でも続くし、
言葉に詰まってもきちんと汲み取ってくれる。
六つも手元にある不思議なアカバナーのことも、気にすることなく会話ができるのだから、
今日の鍵当番が不知火で良かったと新垣は思う。
「新垣」
「ん?」
「たぶん気づいてねーらんから不審んかい思っちょるんだはずんやしが、
とりあえずクリを渡しておく」
「…また」
思い出したくもない物体がまた一つ増えた。
ということは、三年レギュラー全員で仕組んだことなのだろうか。
何のために。
「まぁ、発案的んかいや平古場がな。学生ってぬやジンがねーらんからな」
「不知火やちばりよばジンばんないあるし。てか平古場先輩がぬ~?」
「とぅしびーやっさーろ、やー」
そういうことか、と新垣は納得した。
よくよく思い出してみれば、昨日母が、明日が楽しみね、と言っていた。
朝は遅刻ギリギリな時間に起きたので誰とも会話することなく家を出てきたから、
忘れてしまったのだろう。
「しいしぬーんちアカバナーを…平古場先輩や」
「でぃっか。似合うやっさーぬーやっさーとあびてぃたぞ」
それは検討違いすぎるかな、と思いつつも、自分の誕生日を覚えられていたことが嬉しくて、
七つになったアカバナーを眺めた。
朝に手にしたアカバナーはすこし力をなくしていたが、
きちんと水につけてあげれば大丈夫だろう。
七つのアカバナー…七つ?
「おめでとう、新垣」
照れくさそうに言う幼馴染みにこの疑問をぶつけることができなくて、
家で上の空でいると、母親にせっかくの誕生日なのに、と用意された夕飯の前で嘆かれた。
No.68|比嘉。|Comment(0)|Trackback()
2009/05/22(Fri)21:40
No.67|比嘉。|Comment(0)|Trackback()
2009/04/20(Mon)23:26
No.66|比嘉。|Comment(0)|Trackback()
2009/04/15(Wed)11:15
No.65|比嘉。|Comment(0)|Trackback()