織室
想いを告げることはできないと思っていた中学の頃、
好きという感情がこれほどまでに味気のないものなのかと、身をもって体感した。
よく胸が高鳴るとか聞くけど、僕の場合はただ胸が苦しいだけだった。
姿を見て嬉しいと感じるんではなくて、思いが届かないと悲しく思うんではなくて、
ただただ胸が苦しかった。
でも今はそうは思わない。
諦めたような表情をする十次に、泣きたくなるのだ。
中学を卒業するとき、高校で同じところに通うこと確立少ないだろうと思い、
僕はけじめをつけるために十次に想いを伝えた。
万に一つも返事が来るとは思ってなかったので、
「知って欲しかっただけだ」と言って、その場を後にした。
そのあと、十次から『付き合ってください』とメールが来たときは、
夢なんではないのかと本当に頬を抓(つね)ってみた。結果は、とてつもなく痛かった。
それから、高校は違ったものの、休みの日には連絡を取り合って二人で遊びに出かけた。
時折南たち中学の仲間を呼んでみたりもした。キスも、幾度かした。
同性で想いが通じた奇跡は、代わりに大きな代償を持っていったけれど…。
僕が高校卒業を間近にして、就職か大学かを決めかねている頃だった。
中学の先輩としか紹介されていない僕に、十次の両親から連絡があった。
よく一緒に遊びに行くことを知っていて連絡したらしい。
でもその次の言葉に、一気に血の気が引いた。
十次が、事故に遭ったというのだから。
病院名を聞いてすぐにそこへ向かった。
道順を知っていたからか、交通のものは使わずに走った。
足や身体が軽いも重いも、息が上手くできるもできないも、何も考えずに走った。
否、考えられなかった。
病院に着いたとき、十次のお父さんが玄関口にいて、僕を手術室前まで案内してくれた。
手術室前に置かれた背もたれのないソファには、十次のお母さんが涙を流して座って居た。
手術室のドアの上に目を向けるとまだランプは付いたままで、僕は何もできることが思いつかず、
じっとランプが消えることを待つしかできなかった。
手術室から白い病室に移された十次は、血の気は悪かったものの、
何とか一命を取り留めていて、僕や十次の両親は安堵の溜息を吐(つ)いた。
しかし、テニスをしていた十次にとって、死と同等の現実が待っていたのも、間違いではなかった。
事故によって脊髄が損傷し、下半身マヒに陥ったのだ。
三日ほど経って、十次は目を覚ました。記憶喪失ではないことを確かめる検査をしてから、
十次の両親は意を決して、下半身マヒだと十次に伝えた。
その反応は「そう」と冷静な返事だったらしい。僕はその時、その場にいなかった。
その後日くらいに「十次の目が覚めた」と連絡をもらい、僕は十次の病院に向かった。
病室に踏み入って真っ先に目に入ったのは、確かに息をし、生きている十次の姿。
とたん、十次を失ったような虚偽の喪失感が僕を襲って、
僕は十次を抱きしめてその存在があることを実感し、涙を流した。
「生きていて良かった」と独り言を呟いた。独り言のつもりだったのに十次から返事があった。
驚いて顔を覗き込めば、「ただ生きてるだけですよ」と、
遠くからは分からなかった精気のない瞳に見つめられた。
やってしまいました織室…あの、錦織が誰か、分かります、か…?(おどおど)
山吹の亜久津の代わりにレギュラーになった三年なんですが…認識度低いからどうだろうなぁ。
織室、私大好きです。山吹では東南と同等くらいに好きです。錦織も室町も大好きです。
需要がなくてもいいです…私が頑張って需要を増やします!(※自己満足です)
謝ることが一つありました! 室町の両親も過去、滅茶苦茶捏造しました! あわわ!
あと、この話、書いていたら妙に長くなってしまったので前編・後編と分けます。
あぁそれともう一つ、この話は私の好きな曲を元にして書いてるので、
もしよろしければ聴いてみてください。
ランクヘッドさんの体温という曲です。私真面目にこの曲で涙流したんですよ。いい曲です。
ニコニコ→
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1694310
youtube→
http://jp.youtube.com/watch?v=OpQMnbi1d00PR